君の『好き』【完】





体育館の入口から、そっと顔だけ出して中を覗いた。




覗いた瞬間、入口すぐのゴールに向かって、

部員たちが勢いよく走ってきて、


びっくりして扉の裏に顔を引っ込めた。




び、びっくりした......



いつも一時間しか見たことなくて、

それ以降の練習がこんなに激しいなんて知らなかった。



またそっと顔を出して覗こうとしたら、



目の前に吉井くんが立っていて、またびっくりして扉から一歩下がった。




「もうすぐ終わるから、下駄箱で待ってな」



吉井くんが私からタオルを取り上げた。




「一緒に帰ろう」




そう言って下を向いてタオルを首に掛けた。



顔を上げた吉井くんは、すごく優しい顔をしていて、



一緒に帰れるんだって、



すごく嬉しくて、


ドキドキして.......



「下駄箱じゃなくて、見ていてもいいかな......




私、吉井くんがバスケしているとこ、見ていたいな.......」





恥ずかしくて、下を向いたままそう言うと、


パサっと頭からタオルを被せられた。



「えっ」





タオルの下から顔を出して、吉井くんを見上げると、



ふっと吉井くんが笑って、


パシッと私の腕を掴んで、入口の奥にある階段前まで私を連れて行った。



「階段上って、上から見てな。


こっからだと、危ねーから。



階段、こけんなよ」




ははっと笑って、私の前髪をくしゃくしゃっとすると、



また体育館の中へと走っていってしまった。











< 39 / 205 >

この作品をシェア

pagetop