君の『好き』【完】
体育館の入口から、そっと顔だけ出して中を覗いた。
覗いた瞬間、入口すぐのゴールに向かって、
部員たちが勢いよく走ってきて、
びっくりして扉の裏に顔を引っ込めた。
び、びっくりした......
いつも一時間しか見たことなくて、
それ以降の練習がこんなに激しいなんて知らなかった。
またそっと顔を出して覗こうとしたら、
目の前に吉井くんが立っていて、またびっくりして扉から一歩下がった。
「もうすぐ終わるから、下駄箱で待ってな」
吉井くんが私からタオルを取り上げた。
「一緒に帰ろう」
そう言って下を向いてタオルを首に掛けた。
顔を上げた吉井くんは、すごく優しい顔をしていて、
一緒に帰れるんだって、
すごく嬉しくて、
ドキドキして.......
「下駄箱じゃなくて、見ていてもいいかな......
私、吉井くんがバスケしているとこ、見ていたいな.......」
恥ずかしくて、下を向いたままそう言うと、
パサっと頭からタオルを被せられた。
「えっ」
タオルの下から顔を出して、吉井くんを見上げると、
ふっと吉井くんが笑って、
パシッと私の腕を掴んで、入口の奥にある階段前まで私を連れて行った。
「階段上って、上から見てな。
こっからだと、危ねーから。
階段、こけんなよ」
ははっと笑って、私の前髪をくしゃくしゃっとすると、
また体育館の中へと走っていってしまった。