君の『好き』【完】
くしゃくしゃになった前髪
頭に被されたタオルをそっと取ると、
ぎゅっと胸の前で握り締めて、狭い階段を上った。
階段を上ってすぐのところで、柵を掴んで下を見下ろした。
あ......吉井くん......
ここからなら、周りの目を気にしないで、
吉井くんを見つめることができる。
やっぱり、バスケをしている吉井くん、かっこいい.......
ドリブルで駆け抜けていく姿も、
ぐっと手を伸ばしてシュートする姿も.......
じっと見つめていると、時々吉井くんが上を向いて、
真剣な表情の吉井くんと目が合った。
これから、この人と二人で一緒に帰るんだって思うと、
すごく緊張してきてしまった。
何を話そう。
もう、普通ではいられない......
しばらく見つめていたら、
練習が終わって、部員たちが荷物のところに集まった。
吉井くんはそこから外れて、私の下に近づいてきた、
「タオル、パス」
そう言って、吉井くんは大きな手を私に広げた。
えっ、こっから投げるの?
私は、タオルをくるくるっと小さくたたむと、
えいっと吉井くんに向かって投げた。
すると、全然吉井くんよりも手前に投げてしまって、
でも、吉井くんが手を伸ばして、
ちゃんとキャッチしてくれた。
「着替えるから、下駄箱行ってろよ」
吉井くんは、それだけ言って、
部員たちの元へ戻っていった、
すると、部員たちの視線を一斉に感じて、
その後、吉井くんが部員たちからペシペシ叩かれたり、
つつかれたりしていて、
もしかして、からかわれてしまったのかなって、
私は急いで階段を下りて、
下駄箱へ向かった。
下駄箱で靴に履き替え、
校舎から出ると、綺麗な夕焼け空が広がっていた。
また、からかわれたらいけないと思って、
校舎の横の壁に寄りかかって、隠れながら吉井くんを待った。
すると、吉井くんがバスケ部員たちと校舎から出てきた。