君の『好き』【完】
5人ぐらいいる部員たちの中で、
吉井くんだけが、玄関出てすぐのところで立ち止まって周りを見渡した。
ぱっと目が合って、私は思わず校舎の影に隠れた。
壁に背を向けて、下を見たら、
地面に人影が見えて、
その影がどんどん伸びてきて、
そっと横を見上げると、校舎から吉井くんが顔を出していた。
「なんで隠れてんだよ」
そう言って吉井くんは私の前に立った。
目を合わせていられなくて、また下を向いた。
「だって吉井くんが、からかわれちゃったら、
嫌だなって思って......」
「からかわれる?」
ちらっと上目で吉井くんを見上げると、
吉井くんは首を傾げていた。
「私が体育館で待ったりしたから、
吉井くん、からかわれちゃったでしょ......ごめんね」
吉井くんは私の言葉に、ふっと笑って下を向いた。
「からかわれるのが嫌だったら、一緒に帰ったりしねーよ」
顔を上げた吉井くんが真剣な表情だったから、
そのまっすぐな視線にドキッとしてしまった。
「帰るぞ」
言い聞かせるように、吉井くんは私の頭をぽんぽんと撫でて、
校門の方へと歩き出した。
吉井くんの後に続こうと、校舎の影から出ると、
もう、バスケ部の人たちはいなくて、
少し先を歩いていた吉井くんが立ち止まって振り向いた。
だからちょっと走って、吉井くんの隣に行き、
そっと吉井くんの顔を見上げると、
吉井くんがふっと笑って......
ゆっくりとまた歩き出したから、
私も歩き出して、吉井くんの隣を歩いた。
何を話していいのかわからなかった。
二人でいることが、
ただ、隣で歩いていることだけが、
それだけで、もういっぱいいっぱいで.......
言葉がみつからないまま、夕日に向かって歩いていたら、
吉井くんが口を開いた。