凪とスウェル
その日の夜は当然だけど、ほとんど眠れなくて。


俺、朝早くに家を出て、千春さんのいる病院に向かったんだ。


病室に着いた時、入口のドアが開いていて。


そこから漏れる悲痛な泣き声に、ゾッと背筋が凍ったよ。


怖くて足が震えるけど、勇気を出して足を踏み入れたら。


ベッドの上で千春さんが泣いていて。


俺の顔を見た千春さんの母親が、俺につかつかと歩み寄って来たんだ。


アンタのせいで、千春はもうハードルが跳べない。


スポーツ推薦で大学も決まっていたのに。


この子の将来、どうしてくれるんだって。


ものすごい剣幕で怒鳴られたよ。


俺、すぐに土下座して、必死に謝ったんだけど。


彼女の母親の怒りは、収まりそうになかった。


追い出されるように病室を出て、俺はあてもなく病院内をただフラフラと歩いたよ。
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