凪とスウェル
電話の相手はすずだった。


久しぶりに聞くすずの声。


どれだけ嬉しかったかわからない。


話したいことは沢山あったのに。


何も話すことが出来なくて、ただ立ち尽くしてた。


でもその後。


すずが言った言葉に、俺は驚いた。


俺の家のすぐそばまで、すずが来てるって。


その瞬間、電話を持ったまま家を飛び出した。


何も言葉に出来なかったけど、必死に足を動かして駅前まで行ったら。


すずが噴水の前に座ってた。


俺が何も言わないから、すずはずっと泣いていて。


胸が痛くてたまらなかった。


だけど。


俺は一人の女性の人生を変えてしまったから。


人を不幸にしてしまったから。


その人に、自分の人生を捧げないといけないと思った。


すずに会ってしまったら、その覚悟が揺らぎそうだったし。


何よりすずに会うことは、俺の一番の幸せだったから。


俺一人が幸せになっちゃいけないってそう思って。


それで言ったんだ。




さよならって。
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