凪とスウェル
すずに一方的な別れを告げてからは。


すずへの思いを断ち切るように、ただひたすら病院に通う毎日だった。


そうこうしているうちに、千春さんのお父さんが俺のことを心配するようになってきて…。


千春と同じ年齢のはずなのに、キミの両親は何も言わないのか?


進路はどうするんだ?って。


俺のことは気にしないでくださいって、そう言ったんだけど。


千春さんのお父さんは優しい方で、何度も声をかけてくださったんだ。


だから俺、正直に自分の家庭環境を話したんだ。


そして、一度も千春さんにお詫びに来ない両親を許して欲しいって。


代わりに謝ったんだ。


そうしたら千春さんのお父さん、ひどく俺を気の毒がって。


そんなつもりで話したわけじゃなかったのに。


もしキミさえ良かったら、ウチで働かないかって言ってくださったんだ。


しかも、住み込みで。


昔、住み込みで働いていた従業員がいたそうなんだけど、今はいないから、その人が使っていた部屋を使ってくれればいいからって。
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