凪とスウェル
すごくありがたい話だと思った。


家には帰りたくなかったし、そばで千春さんのサポートが出来るなら、これ以上の条件はないと思った。


奥さんは少し複雑そうにしていたけれど、この頃体調があまり良くないご主人が心配だったようで、主人を助けてくれるならお願いしたいと、そうおっしゃってくださったんだ。


俺は早速自宅に戻って、母親に話したよ。


就職先が決まった、しかも住み込みだと。


特に反対されることもなく、母親はあっさり承諾してくれたよ。


俺が出て行くって聞いて、内心ほっとしたんじゃないかなって思うけど…。


こうして、俺はパン屋に就職することになったんだ。


パン屋の朝は早くて、仕事も決してラクじゃなかったけど。


がむしゃらに仕事をしていたら、すずのことを忘れられたし、つらいことも考えずに済んだ。


そうこうしているうちに、千春さんが無事退院して、リハビリに通うことになったんだ。


リハビリのある日は、俺が千春さんに付き添って病院に通ったよ。


千春さんは元スポーツ選手なだけあって、すごく頑張り屋で。


みるみるうちに足が回復していったんだ。


それを見ていると、すごく嬉しかった。
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