やくたたずの恋
「だけどな……俺と志帆が大学三年になった直後に、志帆の父親が大口の投資に連続で失敗して、破産寸前に追い込まれたんだ。で、その時、うちの親父が志帆の父親に迫ったんだ。借金を返済できないなら、自分の提示した条件を飲め、ってさ。それが……志帆と星野さんとの結婚だった」
「え?」
 話がおかしい。それでは父親が、息子の幸せを奪っているようなものだ。何度も瞬きを繰り返した雛子は、「それって、変じゃないですか?」と首を傾げる。
「だって志帆さんは、影山のおじさまにとっては、息子さんの……恭平さんの彼女だった訳ですよね? それなのに、志帆さんを奪おうとするなんて……」
「親父は、金にかけては容赦がないからな。俺と志帆の関係を知ってて、あいつは志帆を星野さんに売ったんだ」
「売ったって……」
 あまりに酷い言葉に、雛子が顔を露骨に顰める。恭平はそれを見ながらも、何の反応も示さない。
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