やくたたずの恋
「『影山興業』は、ひっでぇ会社だぜ? 困ってる人間に金を貸して、血を絞るように高い利息をふんだくるんだからな。だけど……俺が親父の跡を継げば、少しはマシな会社にすることはできると思う。……っつーか、その自信はある」
 腕組みをして、恭平は街頭の下に佇む。オレンジ色のライトに染まったその顔には、これまでの彼にはなかった、自信と誇りが見えた。
「どうする? 貸金屋の嫁になるか?」
 彼の言葉が、何度も雛子の中でこだました。それは次第に大きくなり、雛子の心を震わせ、涙を溢れさせた。
 ちゃんと恭平の姿を見たいのに、涙が邪魔をする。だが、吹き出す感情には逆らえず、滲んだ水彩画の中に、恭平を捉えていた。
 だけどそれは、悲しみの涙の世界ではない。やがてこの涙の雨の後に、虹が架かる。それは、二人で一緒にいられる世界への橋渡しになるのだ。
 だから、笑顔にならなくては。雛子は涙の溜まった目を細め、大きく頷いた。
「……はい!」
 即答した後で、雛子は恭平の胸へと飛び込んだ。その体を、恭平は丸ごと抱き締める。
 これからは全てを愛そう。彼女のことも、これまでのことも。悲しみも喜びも。そう誓うように、強い力で。
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