やくたたずの恋
 雛子は赤らんだ頬を膨らませ、怒ったように口を尖らせる。その時、鋭い視線がこちらへと注がれたのを、二人は感じていた。
 それは、雛子の父から向けられたものだった。親族の席に座る雛子の父は、娘の晴れの日だというのに、終始不機嫌さを全身で表し続けている。
「横田先生の機嫌は、まだ直らないのか?」
「もう、仕方ないんです」
 雛子は諦めのため息を漏らし、父から目を逸らす。
「『お前が近藤家との結婚を台無しにしたお陰で、俺の面子が!』って、あのパーティ以来、ずーっと言ってますから!」
「で、まだお前を『役立たず』って呼んでいる訳だ」
 娘が大口の融資をもぎ取っても、彼女への罵倒は止めようとはしない。以前の雛子ならば、落ち込むところではあった。だが今は、そんな父親の仕打ちなど、蠅や蚊のフンよりももっと低レベルのものになっている。
「いいんです! 私が父にとって役立たずでも、ぜーんぜん構わないんです! 私は、恭平さんの役に立っていればいいの! 好きな人の傍にいられて、その人の役に立っていれば、それで十分なんです!」
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