やくたたずの恋
「影山社長の息子さんとのことも、お茶を淹れるのと一緒じゃないかしらね」
「えー、そうかな?」
「そうよ。何でもかんでも、すぐにうまくいく、ってことはないわよ」
 恭平とのことで落ち込んだ気持ちを、全て母に見抜かれた気がして、雛子は肩を竦める。
「物事はね、お茶を淹れる時みたいに、ゆっくりと時間をかけた方が、うまくいくことが多いのよ。それに、ゆっくりと育んだものの方が、うまくいった後でも長続きするものよ」
 母の言葉には、彼女が淹れたお茶のごとく、不思議な味わいがあった。他の人が同じことを言っても、きっとここまでしみじみと感じることはないだろう。
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