やくたたずの恋
 高地や、寒冷な地方には、美しい花が多く咲く、と聞いたことがある。それは、過酷な状況にあり、それを乗り越えるからこそ、美しい花を咲かせるのではないだろうか。雛子はそう思っていた。
 そして母もまた、困難な状況にあるからこそ、美しく、優しいのではないか、と。
 母は結局、父の望んだ男の子を生めなかった。そして雛子と共に、父に「役立たず」と言われ続けている。
 それでも母は、輝きを失うことはない。さっきのお茶を淹れる話では、母は自分を「怠け者」と思っているようだが、全く違う。そして父の言う、「役立たず」でもない。美しく優秀な、まさに観音様のような女性だ。
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