@からはじまる。
「ふみさん、いいですか?文音という名前は、隠してください。廉さんの名前も」

小声で言ってきた。

「なんで?良い人そうなのに」

つられて小声になった。

「廉さんと裕紀さんは、凄く仲が悪いです。あと、裕紀さんが良い人に見えるなら、眼科に行くことをオススメするよ。」

うわ、こいつさらっと悪口いいやがった。

「なーに、2人してこそこそしてるの? 廉って聞こえたんだけど、何?ふみちゃんは、廉の大切な人なの?」

うわ、こいつ勘がいい。

「ケンカ中彼女らしきもの。」

「らしきもの。って本当に面白い。何、廉とケンカしてるの?あやねちゃん」

「うん。って、今、文音ちゃんって言った?」

何故、名前を知ってる。こいつ。

「あやねちゃんでしょ?廉の彼女って、有名だよ。ケンカをやめて、この世界から抜け出すきっかけを作ったんだ。って、」

そんなの知らないんですけど、私。

それに、出会った頃には廉はケンカなんかしてなかった。

「確かー、高校の卒業式の日だ!廉から告白して付き合ったって聞いたけど。」

「私と廉が付き合い始めたのは、大学1年の6月くらいです。」

今が、1月だから、5か月前のことだ。

それを考えると私たちは、4か月目でケンカをしたのか。

「あれ?そうなの?なら、違うあやねちゃんなのかなー。名前同じだからねー。なんか、ごめんね」

謝ってないだろ、お前。この金パツやろうが。

「裕紀さん、僕らそろそろ行きますね。」

存在を忘れかけてた、3号くんが私の左腕をつかんだ。

「棗ちゃーん。君だけ消えてくれればいいよ。
あやねちゃんは、残して。」
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