世界一幸せな国Ⅰ
全「……」




……沈黙。



「悪い!すっかり忘れてた」


ロ「えぇ?!お兄様!」



ローナは呆れた顔をしているが、忘れているのは俺だけではなかったはずだ。



ラ「お兄様、感動の再会はいいけど、やることはしっかりしてもらわないと」


う……


弟にそんなことを言われるとは…….


ナースコールを押して1分ほどで、看護師と医者がやってきた。



タタタタタタ……



医「どうなさい……ローナ様!目を覚まされたのですね。お初にお目にかかります。ローナ様の主治医をさせていただいているクリストフ・ベルモンドと申します」



ロ「初めまして。ローナ・ボールドウィンと申します。この度はありがとうございます。本当に本当にありがとうございます。あんな状態だったにもかかわらず救ってくださり、心より感謝しております。今、ここで笑っていられることを本当に嬉しく思います」



ローナは、深々と頭を下げた。


その目は涙で潤んでいる。




ベ「私たちは、お礼を言われるようなことはしておりません。しかし、無礼を承知の上で申し上げます。もっとご自身のお身体を大切になさってください。ローナ様がご家族の方々を大切に思っていらっしゃるのと同じくらい、ご家族の方々にとってローナ様は大切なんです。そんな、大切な家族を悲しませる真似だけは、もうなさらないでください」


ロ「……はい」



ローナは一言そう言っただけだった。


先ほどよりもうつむいていて、シーツはどんどん濡れていった。

< 141 / 256 >

この作品をシェア

pagetop