世界一幸せな国Ⅰ

一番大切な場所



私は前世で唯一幸せだった時に夢で戻った。





懐かしい。



ここは、わたしにとって一番大切な場所だ。





「聞けええぇぇえ!!」



……雪斗。


雪斗の声が聞こえる。




信頼していた仲間、友達の1人。


私の代の、幹部をしていた。




溜まり場だった倉庫の二階に、あの懐かしい幹部が立っていた。


顔つきが、記憶より凛々しくなっているような気がする。



そこに、私と彼方はいない。



あぁ、これは回想じゃなくて今の魁桜(カイオウ)なのだろうな。



私たちがいなくなった世界の。





「今日をもって、俺達6代目幹部は引退する」



蓮……。


一番弱くて泣き虫だった彼は、幹部をするころには後輩に寄り添う優しい先輩になっていた。




もうみんな引退するような歳なんだ。

……もう、二十歳過ぎたんだね。



同じように歳をとれなかったことを、寂しく思った。




しかし、あの後皆が無事だったことに対する安堵感も感じた。




< 197 / 256 >

この作品をシェア

pagetop