Golden Apple
空気が冷たい。
この場所に人が寄り付かないのは分かる。
みんな寄って集って暖かい場所に行きたがる。
虫みたいだと、そんなのを見て思うあたしは虫以下だ。
…虫にもなれない。
「君の欲しいモノとは?」
右手の人差し指と中指に挟まれたそれから煙が流れる。
「家族」
一言そう返すと、きょとんとした顔。
笑顔の消える一瞬。
ほら、何も言い返せない。
「うん、分かった」
急に立ち上がるミカミを目だけで追う。
分かったって、何が。
「あ、学校は禁煙」
笑顔で、地面で消した煙草をわざわざ拾って、ごみ箱へ投げた。