Golden Apple
テーブルに置いておいた煙草の箱が無くなっていることに気付いたのは夕方。
人差し指を唇の端に当てて、赤い椅子に乗ってぐるんぐるんと回る。気持ち悪くなる寸前で玄関の鍵が開く音がした。
犯人の目星はついてる。
「ちょっと、」
現れた男を睨みつける、けれど、違った。
知らない。あ、でも見たことはある。
黒縁眼鏡。あのとき、ロン毛と喧嘩した時に一瞬見た男。
ミカミが名前を呼んでいた気がする。
なんだっけ、忘れた。
「あ、この前の女の子じゃん」
あたしの姿を捉えた男がこっちに小走りに近寄ってきた。