【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー



相変わらずわちゃわちゃしながらもホールの中へと入ると、この独特の空気に包まれて皆静かになる。



しばらくすると、ホールが暗くなり幕が上がる。



ここに来る前に永太に少し説明を聞いたけれど、オペラはミュージカルと違って生の演奏と演劇が折り重なる形態のものである。



生まれて初めてのオペラ鑑賞に胸の鼓動が高鳴る中、オーケストラ部の演奏と共に、物語の序曲が流れ始めた。



あの、ベルベッド生地の青の衣装を纏った澪ちゃんが、重低音のはりのある声で歌う姿。



私も、永太も、普段落ち着きのない雅治だって静になり、ステージに立つ澪ちゃんに釘付けになる。



いつもはぽんわりとした無表情で、天然で大型犬を思わせる澪ちゃんだけど、ステージで『タンホイザー』になった澪ちゃんは、情熱的で、表情豊かで、何だか妖艶なのだ。
< 138 / 248 >

この作品をシェア

pagetop