【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー
落ち着いた澪ちゃんを連れて四人で永太の家に辿り着くまで、澪ちゃんはずっと耳の折れた犬のようにしゅん、と項垂れていた。
居間でシークワサージュースを飲みながら、澪ちゃんは話し出す。
「わん、一度うぬ役にいゆんと、わんじゃなくなるんやっさー。公演が終わっても、入り込んや役がしぐにや体から抜けなくて。」
「そっか……だから、部員の人とも一緒にいないであんなとこに一人でいたんだね。」
なのに、私は自分の沸き上がる感情に任せて会いに行ってしまった。永太の制止も無視して。
「わっさん、あんねーる形で悠莉んかい触れてしまって。」
悪いのは知らなかった私なのに、澪ちゃんに謝られると悲しくなってしまう。
「私こそごめん。それほど、澪ちゃんがタンホイザーに本気だった証拠だもんね、あのオペラでそれは伝わったよ?」
「じゅんに?」
私の言葉に顔を上げた澪ちゃんは、いつもの穏やかな瞳をした澪ちゃんで、私は柔らかなサラサラのショートウルフをナデナデした。