それでも、僕は恋をする。
直海さんは。
案の定、家庭教師をクビになった。
親は新しい家庭教師を雇わず、塾に通うよう勧めたけど、センター試験まで2か月を切っていたので、断った。
僕は、学校帰りに時々直海さんのアパートに行って、勉強を教えてもらっていた。
「授業料はカラダで払いな」
なんてことを言っていたけど、直海さんはあれ以来一度も、僕に手を出すことはなかった。
だけど、なぜだろう。
部屋にカリカリと響くシャーペンの音、直海さんの描く大きな花丸、ブレイクタイムの砂糖たっぷりのカフェオレの香り、そういったものだけで僕は満たされていた。
そして。
僕は志望校に合格し、地元を離れた。
しばらくの間は、たまに連絡を取り合っていたけれど、直海さんのイギリス留学をきっかけに、僕らは音信不通になった。