それでも、僕は恋をする。
……ったく、この人は。馬鹿じゃないのか?
忘れるわけないじゃないか。
「いやぁ、まさかリンの講義を聴くことになるとはなぁ」
腕を組んでにやりと笑う。
十数年ぶりの再会だというのに、このライトな感じに苦笑しそうになる。
この人には時間の感覚というものがないのだろうか。
「え?なんでここにいるの?」
「俺さ、ここで中学校の先生してるの」
直海さんは屈託なく笑った。
昔と変わらない笑顔、雰囲気。
胸が……
熱くなってしまう。
どれほど会いたかったか。
どれほど、思いを伝えたかったか。
あなたのせいで、僕はずっと、不器用な恋しかできなくて。
あなたが僕の心をさらったまま、姿を消してしまったから。
「そうだったんだ……」
僕は、思わず直海さんを下から上へなめるように眺めた。
「そんな珍しいもの見るみたいに見るなよ」
「いや。だって、珍しいでしょ」
「まあでも、元気そうでなによりだよ」
その台詞はこっちの台詞だ。
イギリスに留学したきり、音信不通になってしまって。
生きているのか死んでいるのかすらわからなかったのは、あなたの方なのに。