相容れない二人の恋の行方は
「千智さん。誰っすかァ? この女」
「んー? ボクの家庭教師かな」

 金髪、ピアス、刺青……。そして凄まじいバイクのエンジン音。
 柄の悪い高校生の溜まり場だった。そんな人たちの視線を一身に浴びて私は恐怖に震えていた。

「あ、あの……新谷君……」
「なに?」
「わ、私、そろそろ帰らなくちゃ……」
「そう? いいよ」
「え……」

 あっさりといいよとの返事がもらえる。勉強は? なんて異論、唱える余裕なんてない。ただこの場から逃げ出せる、それだけが重要。

「なぁ。誰か彼女を送ってやってよ」

 新谷君のその言葉のあとすぐに、私の前に大きなバイクに乗った長身の厳つい男が立ちはだかった。恐怖で腰を抜かす私をいとも簡単に持ち上げバイクの後ろに乗せると、エンジンをふかす大きな音に思わず耳を塞いだ。
 涙目になる私の横に新谷君がやってきて、一言。

「しっかり捕まってないと、死ぬよ?」

 その言葉と同時に、ゆっくりと動き出すバイク。慌てて、バイクを運転する男の身体にしがみつくと大きなエンジン音と同時に一気に急加速した。

「きっ……! きゃああああっ!!!」

 今までにあげたこともないような悲鳴をあげて、私を乗せたバイクは走り去る。
 去り際に視界に入った新谷君が、口元に笑みを浮かべていたのを私は見逃さなかった。
 猛スピードで走り抜けるバイクの後ろで、私は生まれてはじめて本気で死ぬ思いをしたのだった。
 それから中間テストまでの一週間、パシリは毎日、時々三途の川が見える。こんな地獄のような日々が続き……

「ど、どういうこと…………!?」

 編入してはじめてのテストはゆっくりと勉強する暇がなかったせいで散々な結果。
 でも自分の悲惨な成績結果よりなにより、一番驚いたのは。

「さすが新谷さん! 今回の期末テストも学年一位ですって!」

 クラスメイトの噂話の真意を確かめるべく下校後に新谷君の元へと向かう。勉強を教えると言う目的で下校後に毎日向かう講堂。しかし一度もまともに勉強などしたことがないその場所に、先にやってきて自身の成績表を眺める新谷君が、私の存在に気がつくとゆっくりとこちらに視線を向けた。
 そして成績表を見せびらかすようにヒラヒラとかざしながら一言。

「ごめん。ボク、頭いいんだった」
「はぁ!?」

 悪びれる様子などまったくなくニコニコご機嫌な様子でと学年一位と記された成績表を得意気にかざしている。
 そして、屈辱的な一言を放つ。

「今日からはボクが勉強を教えてあげよっか」

 一体全体、新谷君、いや、新谷は私をどうしたいのだろうか。
 怒り、疑問、困惑。さまざまな感情が自分の中を一気にかけめぐった。

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