相容れない二人の恋の行方は
「真由子さんの何にたいしてもいつも真面目に全力で一生懸命目標に突き進む姿に惹かれました。そういう人間(ひと)が自分の周りにはいなかったし、僕自身もそういう風にひた向きに頑張れることってなかったので」

 なに……それ。はじめて聞く話に、本心なのか作り話なのかの判断に迷って固まる。そんな私をよそに、母親が口を挟む。

「それは有名校に通っていた新谷さんを含め周りのみなさんも完璧だからよ。真由子はほんとにお父さんに似て……勉強だけはそこそこ出来るんだけど基本何にたいしても不器用だし、どんくさいし、要領悪いし、頭も実はそんなに良くないんじゃ? って思うこともたびたび……」
「お母さん!!」

 顔を真っ赤にして止めにはいる。酷い、そこまで言うことないのに……! よりによって、恋人としてここに来ている新谷の前で!
 新谷は吐息を漏らすように吹き出すと瞳を伏せた。そして「知ってます」と一言発すると口元に柔らかな笑みを見せた。
 ……調子が狂う。いつもなら、反論する余地もない冷たい一言(ツッコミ)で一刀両断にするのに。もう、わけわかんない……
 顔に熱を感じたまま放心する私に母親が「やだ~真由子ったら照れてるわ」と言ってからかってきたけど、何も返事をする気が起こらなかった。

 私を除き和気あいあいとした雰囲気で長時間の食事と晩酌、食後のお茶と談笑を楽しみ、その後……

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