相容れない二人の恋の行方は
*
肌を撫でる風が、さっきより冷たく感じる。
私は今、つい先日木崎さんたちと行った臨海みなとパークの大観覧車を……船上から見ている。
「夕焼け時の景色、一度見てみたかったんだよね」
新谷に連れられたのは大型のレストラン船だ。
本来なら必須であろう予約、乗船手続きなしで顔パスで船に乗り込むと、贅沢に海を見ながら食事を楽しめる個室まで用意された。
でも新谷は食事目的ではなかったようで、船に乗り込むと一目散にオープンデッキに向かったのだ。
デッキから景色を眺める乗客は私たち以外にもいるけど、船内からも十分に景色は見られるため少ない。
トワイライト。輝く夕陽と真っ赤に染まった風景は幻想的だ。乗り物が苦手だと言うことも忘れて私は目の前に広がる風景に見入っていた。
「すごい……」
私は一言だけそう口から漏らすと、夕陽が沈み街に明かりが灯っていく数十分間を無言で過ごした。
陽がほぼ沈み、船上を装飾する明かりが灯る。
「どうだった? 夜景も結構綺麗だよな」
「はい……感動しました」
「感動と言えば。この間の観覧車からの景色も綺麗だったのに真由子のせいで全然見られなかった」
「なんで私のせいなんですか!」
「大丈夫そうだな」
「……え」
新谷はちらっと一度私に視線を向けると、前を向いて身をかがめ手すりに身体を預けるように頬杖をつき「船酔い」と言った。
私は無言のまま頷く。
静かな海の上、目の前に広がる美しい夜景の大パノラマ。そして肌をかすめる冷たい風が、ロマンチックなムードを引きたてるようでトクトクと胸が小さく高鳴り出した。
「寒いな。中入ろうか」
その言葉に、まだどこかこの場を離れたくないという思いがそうさせるのか、私は口を閉じたまま。
「真由子?」
反応のない私に、新谷は身をかがめたまま私の顔を覗きこむ。
至近距離で目が合うと、いつもなら堪らず逸らすのに、身体が動かなかった。このムードに感化されたのか、理由は分からないけどじっと相手の目をみたまま金縛りにあったようにそらせなくなった。
「逸らさないんだ」
近距離で耳に響く声に身体が反応してゆっくりとした瞬きをしたほんの一瞬に、唇にふわっと軽い感触。
「冷たい」
目を開けると今度は吐息を肌に感じる程の距離で言われ、そして再び唇に柔らかい感触。
一度目より長く、強く、そっと目を閉じると相手の熱を唇に感じることが出来た。
離れても、すぐにまた重なる。お互いに冷たくなった唇もあっというまに互いの熱に溶かされるような。そんな熱いキスを夢中で繰り返した。
どこかまだ、自分でも信じられなかった気持ちが確信に変わる。
……好き。
生まれてはじめて実った恋に、淡い期待を馳せる。近い未来、明日ですらどんな一日が待っているのだろうと思うだけで胸がときめく。
そんな、恋愛モードを味わいふわふわとした夢見心地にいられたのも一瞬だった。
十二月に入ってすぐ、私は元職場への復帰を一方的に告げられた。
その告げた本人、新谷はというと、「しばらく留守にする」とだけ言い残し、行き先も告げずマンションを出て行ってしまった。
肌を撫でる風が、さっきより冷たく感じる。
私は今、つい先日木崎さんたちと行った臨海みなとパークの大観覧車を……船上から見ている。
「夕焼け時の景色、一度見てみたかったんだよね」
新谷に連れられたのは大型のレストラン船だ。
本来なら必須であろう予約、乗船手続きなしで顔パスで船に乗り込むと、贅沢に海を見ながら食事を楽しめる個室まで用意された。
でも新谷は食事目的ではなかったようで、船に乗り込むと一目散にオープンデッキに向かったのだ。
デッキから景色を眺める乗客は私たち以外にもいるけど、船内からも十分に景色は見られるため少ない。
トワイライト。輝く夕陽と真っ赤に染まった風景は幻想的だ。乗り物が苦手だと言うことも忘れて私は目の前に広がる風景に見入っていた。
「すごい……」
私は一言だけそう口から漏らすと、夕陽が沈み街に明かりが灯っていく数十分間を無言で過ごした。
陽がほぼ沈み、船上を装飾する明かりが灯る。
「どうだった? 夜景も結構綺麗だよな」
「はい……感動しました」
「感動と言えば。この間の観覧車からの景色も綺麗だったのに真由子のせいで全然見られなかった」
「なんで私のせいなんですか!」
「大丈夫そうだな」
「……え」
新谷はちらっと一度私に視線を向けると、前を向いて身をかがめ手すりに身体を預けるように頬杖をつき「船酔い」と言った。
私は無言のまま頷く。
静かな海の上、目の前に広がる美しい夜景の大パノラマ。そして肌をかすめる冷たい風が、ロマンチックなムードを引きたてるようでトクトクと胸が小さく高鳴り出した。
「寒いな。中入ろうか」
その言葉に、まだどこかこの場を離れたくないという思いがそうさせるのか、私は口を閉じたまま。
「真由子?」
反応のない私に、新谷は身をかがめたまま私の顔を覗きこむ。
至近距離で目が合うと、いつもなら堪らず逸らすのに、身体が動かなかった。このムードに感化されたのか、理由は分からないけどじっと相手の目をみたまま金縛りにあったようにそらせなくなった。
「逸らさないんだ」
近距離で耳に響く声に身体が反応してゆっくりとした瞬きをしたほんの一瞬に、唇にふわっと軽い感触。
「冷たい」
目を開けると今度は吐息を肌に感じる程の距離で言われ、そして再び唇に柔らかい感触。
一度目より長く、強く、そっと目を閉じると相手の熱を唇に感じることが出来た。
離れても、すぐにまた重なる。お互いに冷たくなった唇もあっというまに互いの熱に溶かされるような。そんな熱いキスを夢中で繰り返した。
どこかまだ、自分でも信じられなかった気持ちが確信に変わる。
……好き。
生まれてはじめて実った恋に、淡い期待を馳せる。近い未来、明日ですらどんな一日が待っているのだろうと思うだけで胸がときめく。
そんな、恋愛モードを味わいふわふわとした夢見心地にいられたのも一瞬だった。
十二月に入ってすぐ、私は元職場への復帰を一方的に告げられた。
その告げた本人、新谷はというと、「しばらく留守にする」とだけ言い残し、行き先も告げずマンションを出て行ってしまった。