相容れない二人の恋の行方は
 今日がクリスマスだということを意識して街を歩くと、所々からクリスマスのムードが漂ってくる。街を彩る煌びやかな装飾、どこからともなく聞こえてくるクリスマスソング、そしてやたらカップルばかりが目に入るのも今日がクリスマスだからだろう。
 去年まではこの街中の雰囲気の中にいてもなにも感じなかったのに、今年はなぜか胸が苦しい。

 クリスマス、か……
 たかがイベント。だいたい、恋人たちのためにある日でもなんでもない。
 プレゼントだって、サンタさんが子供たちに夢を贈る日であって、恋人同士がプレゼントを送り合う日でもなんでもない。
 ……あの人に、なにを贈ったらいいかなんて分からないし。無駄に悩まなくて済んで私はほっとしている。
 だいたい、側に居ない人間を思って悩むこと自体馬鹿馬鹿しい。だから、例年通り一人で過ごすクリスマスはとても気楽だ。

 無意識に歩く速度が落ちて、やがて立ち止まった。

 そうだよ、クリスマス自体は私にとってはなんでもない。
 一人で過ごすクリスマスなんて平気だし、誰かと一緒に過ごしたいわけでもない。今日がクリスマスだろうがそんなの関係ないのだ。

 ただ、隣(そこ)に居ないのが寂しい。

 ただただ、会いたい。

 俯いていると、熱くなった目頭からこぼれ落ちそうになって、無理やり前を向いた。
 ゴシゴシと手で乱暴に目を拭って、一歩前に踏み出すとそこはマンション前だった。

 そしてマンション入り口前で佇む見覚えのある人物の横顔が視界に入ると駆け出した。

< 160 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop