相容れない二人の恋の行方は

37 正気ですか?

 無意識に駆け出していた私の足音に気づいてゆっくりと振り返る。その、たった今思いを馳せらせて涙した人物が、私の姿を確認すると笑みを浮かべながら口を開いた。でも、声は発せられることなくすぐに口を閉じるとじっと私を見つめた。
 白い息を漏らしながら肩で息をする私が口を開く。

「今まで、どこに……!」

 落ち着いてた様子でただじっと私を見据える相手とは対照的に、息を荒げ、一人取り乱している状態の私。でも、落ち着いてなんかいられなかった。
 約一か月の間行方をくらましていた新谷が突然目の前に現れたのだから。

「中、入ろう」

 高揚する私の気持ちを鎮めるような落ち着いた声。ようやく冷静になって頷くことが出来ると、マンションの入り口に入っていく新谷の背中を追って足を進めた。

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