相容れない二人の恋の行方は
「ねぇ、知ってる? 他校からこの春C組に編入してきた渡辺さん」
「あぁ、うん。でもクラスが違うし見たことはないけど」
「うん。私もクラスは違うんだけど、どんな子かなって会いに行ってみようと思ったんだけど……ね」

 放課後、帰宅時にばったりと会ったまなみがそのままウチに寄った。
 部屋に到着するなり編入生の話を切り出し、浮かない顔をしている。その理由を聞かなくてもなんとなく察した僕はそのまま何も言わず彼女の言葉を待つ。

「やっぱりというか……馴染めてないと言うか。ほら、宮小路(みやこうじ)さんと同じクラスじゃない? だから余計に……可哀そう」
「宮小路さん? ……あぁ」

 どこかの資産家令嬢で、いつも多くの取り巻きを連れている高飛車という言葉がぴったりの女性だ。

「私が見に行った時は、宮小路さんとその取り巻きの女子たちに囲まれてすごく居心地の悪そうな顔して萎縮してて……助けてあげられればいいんだけど、ね」
「宮小路さん、だっけ。あの人ボクやまなみの前ではびっくりするほど愛想が良くて感じいいもんね」
「私はたまたま千智の幼馴染で恋人だと勘違いされているから親切にしてもらえるだけだよ」

 学院(ウチ)に編入してくる生徒のほとんどは、親の仕事で近くに引っ越してきた人間が、学校のブランド名につられて興味本位で入学してくる人がほとんどだ。編入試験が難関で合格は難しいため、それに合格する学力なのだからそれなりに優れた人材であることは確かだ。
 ただ、そんなものは関係なく家柄で人を判断する人間がこの学院内には多くいる。宮小路という女生徒がそうなのだろう。

「校内一の美少女と言われるまなに敵なんていないんじゃないかな」
「もう、からかわないで! 真面目な話をしてるんだから」

 まなみは頬を膨らませて僕をにらみつけると深いため息をついた。

「ねぇ、せめて。見かけたら声をかけてあげよう?」
「え?」
「私も心がけるから、千智もね」
「……あぁ、うん」

 弱い立場の人間に対して心優しく親切に接するまなみを僕は昔からずっと見てきた。その影響は少なからずあると思う。

「ボクも出来るだけのことをするよ。せっかく入学してきたのだから一緒に卒業したいよね」

 でも、笑顔になるまなみを見てほほ笑み返しながら、心の中の僕はいつも冷めきって無表情そのもの。

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