相容れない二人の恋の行方は
空港で社長をお出迎えして車まで案内すると言う第一の任務を無事こなし、次の目的地まで向かうまでの車中、私は社長の隣に座って手に汗を握っていた。
「吉井さん、だったよね。急な帰国で迷惑をかけたね」
「い、いえ!」
数えるほどしか顔を合わせていないのに私の名前を覚えてくれていたと言う驚きと、初めて面と向かって挨拶以外の会話をする緊張で声が震える。そんな私を見て社長は「そんなに緊張しなくていい」と言って控えめに口角を上げた。
新谷(しんたに)社長は私が勤める会社以外にも数々のブティックを経営する有名な実業家だ。艶のある黒髪、きりっと細いつり目のクールな瞳、上品で大人の魅力漂う落ち着いた雰囲気と立ち居振る舞い。妻帯者で子供もいるという。
私は不倫など不道徳なことは許せない真面目な性格だけど、相手が社長のような人だったら道を踏み外すことだってあるのかもしれない、社長はそう生まれて初めて私に思わせた人物だ。ま、社長からしてみたら私のような凡人は対象にすらならないだろうけど。
度々沈黙をはさみながら、社長は私を相手に口を開く。
「吉井さんはまだ入社して半年が経ったばかりだったね。ということは、今にじゅう……」
「23になりました」
「そうか。ということはやっぱり私の息子と同じ年だ」
同じ年の息子。
その言葉に一瞬言葉を失う。
「同じ……ですか」
「あぁ。甘やかして育てたつもりはないんだがね、君に比べるとまだまだ子供のように見える。自分の子だからそう見えるのかもしれないが」
「はぁ……」
お、同い年の息子って……社長は、どこからどう見ても三十代半ばくらいにしか見えない。でも、私と同い年の息子がいるってことは自分の親とそう変わらない年齢ってことだよね?
あまりにも自分の父親と比べて違いすぎるため、度肝を抜かれてしまった。
「そういえば、確か君の経歴……栄華(えいが)学院卒とあったね」
「はい。高校だけですけど。親の仕事の都合で急に引っ越すことになって……」
「あそこに外部から転入できるとは。やっぱり君は優秀なんだね」
「いえ……」
「私の息子も通っていたのだが」
社長のその言葉に、一瞬にして全身の血の気が引いた。さらに、
「新谷(しんたに) 千智(ちさと)」
社長の口からその名前が出た瞬間、身体がぶるっと震えて全身から汗が噴き出した。
確かに社長の苗字が「彼」と同じだということは入社してすぐに気が付いたけど、ただの偶然だと思ったし、社長本人に会ったら、自分と同い年の子供がいるんなんて思いもしなかったから……顔だって、全然似ていない。
必死に動揺を隠そうと小さく深呼吸を繰り返していると車が目的の場所に到着して停まり、慌てて降りると社長を見送り私はその場で待機。
車に乗って社長を待つ間、私はずっと放心状態だった。
「吉井さん、だったよね。急な帰国で迷惑をかけたね」
「い、いえ!」
数えるほどしか顔を合わせていないのに私の名前を覚えてくれていたと言う驚きと、初めて面と向かって挨拶以外の会話をする緊張で声が震える。そんな私を見て社長は「そんなに緊張しなくていい」と言って控えめに口角を上げた。
新谷(しんたに)社長は私が勤める会社以外にも数々のブティックを経営する有名な実業家だ。艶のある黒髪、きりっと細いつり目のクールな瞳、上品で大人の魅力漂う落ち着いた雰囲気と立ち居振る舞い。妻帯者で子供もいるという。
私は不倫など不道徳なことは許せない真面目な性格だけど、相手が社長のような人だったら道を踏み外すことだってあるのかもしれない、社長はそう生まれて初めて私に思わせた人物だ。ま、社長からしてみたら私のような凡人は対象にすらならないだろうけど。
度々沈黙をはさみながら、社長は私を相手に口を開く。
「吉井さんはまだ入社して半年が経ったばかりだったね。ということは、今にじゅう……」
「23になりました」
「そうか。ということはやっぱり私の息子と同じ年だ」
同じ年の息子。
その言葉に一瞬言葉を失う。
「同じ……ですか」
「あぁ。甘やかして育てたつもりはないんだがね、君に比べるとまだまだ子供のように見える。自分の子だからそう見えるのかもしれないが」
「はぁ……」
お、同い年の息子って……社長は、どこからどう見ても三十代半ばくらいにしか見えない。でも、私と同い年の息子がいるってことは自分の親とそう変わらない年齢ってことだよね?
あまりにも自分の父親と比べて違いすぎるため、度肝を抜かれてしまった。
「そういえば、確か君の経歴……栄華(えいが)学院卒とあったね」
「はい。高校だけですけど。親の仕事の都合で急に引っ越すことになって……」
「あそこに外部から転入できるとは。やっぱり君は優秀なんだね」
「いえ……」
「私の息子も通っていたのだが」
社長のその言葉に、一瞬にして全身の血の気が引いた。さらに、
「新谷(しんたに) 千智(ちさと)」
社長の口からその名前が出た瞬間、身体がぶるっと震えて全身から汗が噴き出した。
確かに社長の苗字が「彼」と同じだということは入社してすぐに気が付いたけど、ただの偶然だと思ったし、社長本人に会ったら、自分と同い年の子供がいるんなんて思いもしなかったから……顔だって、全然似ていない。
必死に動揺を隠そうと小さく深呼吸を繰り返していると車が目的の場所に到着して停まり、慌てて降りると社長を見送り私はその場で待機。
車に乗って社長を待つ間、私はずっと放心状態だった。