相容れない二人の恋の行方は

17 元自宅、隣人の正体は

 用事があると言って新谷が終日家を空けることになった日に、ようやく【自宅】に帰ることが出来た。最後に自宅を出た日から一か月も先のことだった。
 プライベートな時間は割と自由で、一人で出歩ける時間はいくらでもあったけど、帰ってきてしまったら最後、片付けと退去の手続きをしに来る時だと思ったら迷いが生じてなかなか来れなかったのだ。

「……はい、はい。引き渡し日は来月、十一月の十日ですね。はい、よろしくお願いします」

 不動産屋さんに退去の連絡を入れ鍵の引き渡し日が決まった。連絡を入れてからまだ数日間は私の家だけど、ここで生活することはもうないだろう。何回かに分けて荷物を取りに来るくらいかな。

 再会をしてからは毎日が慌ただしくて、何よりすべてが受け入れられなかった。しばらくは漠然と過ぎ去る日々を送っていたけど、生活も仕事にも慣れ少しずつ落ち着いてくると新谷の思いつきに振り回されることがあっても、無茶な指示を出されることがあっても、昔に比べればまだマシかな……なんて考えて受け入れている自分は確実にマヒをしてきているのだろう。

 今も突然引っ越そうと言った新谷の思いつきの一つはなんとか止めて、あの高層マンションに住んでいる。引っ越しは私のためだとか言っていたけど……その突然の気遣いの裏に何かあるんじゃないかと思うと怖すぎて体当たりで止めた。

 同居の一番の救いはやっぱり、異性と生活しているにも関わらず変な気を遣って気疲れすることがないこと。彼なりに色々と気遣ってくれているのかプライベートな空間は完全に別だし、一人で過ごしているときに必要以上に干渉してくることはない。過去に不良に襲われそうになったことや元彼のことなどがあって男の人はやっぱり苦手だし怖いけど新谷にはそういう怖さはない。やることなすことすべてが想像を絶する、という怖さはやっぱりまだ拭いきれないけど……。

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