相容れない二人の恋の行方は
「でも最近はさ、警察に目をつけられたり、その筋の人が出入りする様ようになったり。警察沙汰になるのはごめんだし、危ない人間が近づくようになってきてさすがに潮時かな、って。ボクにも立場がある。親には迷惑をかけたくないからね。でも……一度楽しさを知っちゃったからさ。元の退屈な毎日に戻るのにはまだ少し抵抗がある」
「あの……!」

 ただただずっと一方的に新谷君の事情を聞かされ、やっとここにきて口を挟むことが出来た。

「もしかして……心配してます?」
「心配?」
「心配しなくても、私誰にもしゃべったりしないし、この間見たことも今聞いたこともすべて忘れますので安心してください!」

 新谷君に私に真実をバラされるのを恐れているような素振りは一切ない。むしろ、聞いてもいないのにベラベラと事情を述べているくらいだ。だから私の今の発言は完全に話の流れを無視した飛んだ発言だったけど、とにかく早くこの場から離れたい一心で無理やり話を終わらせようとして出た言葉だった。とにかくこれ以上聞きたくなかった。すべて見なかったこと、聞かなかったことにして関わりを持ちたくなかったのだ。

「それでは失礼します!」
「ははっ!」

 立ち去ろうとすると、今まで小さく控えめにしか笑顔を見せなかった新谷君が肩を揺らしてはじめて声を上げて笑った。

「たしかに、ボクの裏事情を知るのは君だけだけど……」

 君だけだ、その言葉がずしりと重く圧し掛かる。

「ボクは別に、バラされることなんかこれっぽちも心配してないよ。誰が君の言うことを信じるの? この学院に、ボクの言うことを信用しない人間なんていない」

 低い位置からじっと見上げられ、見下ろしているのは自分の方なのに見下ろされているような妙な威圧感に身が固まる。

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