相容れない二人の恋の行方は
「千智、おまえには貸しがあったよな」

 その言葉に、新谷は無言でじっと弘毅さんを見据える。心なしか、さっきまでの和やかな雰囲気から一転してピリピリとしたムードになってきたような気が。

「突然理由も言わずにグループ抜けるって言いだして、おまえには色々世話んなったし、助けてもらったこともあったからそこはすべて俺が引き受けた。ここで一旦貸し借りはなくなった。でも卒業間近になって、おまえの方から近頃自分と真由子の回りで不穏な動きをする奴らがいるからグループごと潰してほしいって言われて……ここで貸し一つ。礼はまだもらってなかったよな?」

 私には理解の出来ない会話のやりとり。でも少し前に新谷が話していた昔付き合っていた一番気の合う仲間、それが弘毅さんなんだろうということは予想がついた。
 呆然と立ち尽くしていると弘毅さんが目の前に立っていて、両手を私の肩に乗せるとくるりと私の身体を反転させて新谷と向かい合わせた。そして私の肩を自分の方へと引き寄せた。

「真由子でいいよ。俺、今日一目見て気にいっちゃったんだよね」

 突然の男性の接近に怖くて震えていると、私の肩に置かれた手がぱっと離れた。

「おー怖っ! 俺殺されるかも!?」
「え……?」
「今日のところは帰るよ」

 弘毅さんは身をかがめ私の顔を覗き込むようにして見ると「またね、真由子」と人懐っこい笑顔を見せバイクに乗って走り去っていってしまった。
 隣から発せられる殺気に気づいたのはその直後。恐る恐る新谷を見上げると、さっきまでの再会を喜んでいた和やかな雰囲気は完全に消え、殺気を放ちながら静かにじっと弘毅さんが走り去っていった方角を見据えていた。怒ってる……んだよね? なんで……?

「真由子」
「はっ……はい!」
「帰るぞ」
「はい!」

 先を歩く新谷について歩きながら頭の中を整理。
 新谷は弘毅さんに借りがあって、そのお礼がどうとか言っていたけど……どうやら巻き込まれているっぽい私。なんだか、嫌な予感……。

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