相容れない二人の恋の行方は
 怖い思いをさせないと言った新谷に不覚にもときめきを感じてしまったのはほんの30分前。30分後の今、私は恐怖に震えていた。
 うそつき。何が怖い思いはさせないだ……

 場所は再び私の自宅。元不良仲間の二人が向かい合って殺気を放ちながら睨み合っている。不良用語で言うタイマンというものだ。
 とてもじゃないけど、私なんかが割って入って行ける雰囲気ではなくて、ただただ新谷の後方で震えていた。

「珍しいな。他人のことで千智が自ら出向いてくるなんて」

 不敵な笑みを浮かべる弘毅さんの言葉に新谷は何も返事はしなかった。

「なんだよ、何か言……」
「確かにおまえには借りがある。でもそれを真由子で返すなんて言った覚えはない。だいたい、ボクがそういう下劣なこと嫌いなの知ってるだろ」
「ふん。おまえがどう思おうと今は関係ない。俺はただ真由子を助けたいって思っただけだよ。どうせまた、嫌々おまえに連れまわされてるんだろ?」

 新谷が沈黙すると、私の方へと視線を向けた弘毅さんと目があったけど、私は咄嗟に逸らして俯いてしまった。

「嫌われちゃったかな。ちょっと、強引すぎたかな」

 弘毅さんの言葉を耳に聞きながら何も答えられずにいると、代わりに新谷が口を開く。

「何がしたいんだよ、おまえ。借りがあるのはボクだろう? ボクが何でも言うことを聞く。だからもう真由子には手を出すな」
「そんなこと言われてもさ……」

 そう言いながらもう一度こちらに弘毅さんが目を向けたけど、私は一層深く俯くだけで言葉も何も出なかった。すると弘毅さんが短く大きな溜息をついた。

「分かった。分かったよ。……じゃあ、殴らせてよ」
「……」
「千智には出会った時にぶん殴られたきりで、やられたまんまだし」
「いいよ」

 ためらう様子もなくすんなりと弘毅さんの要求を受け入れる新谷の返事に驚いて顔を上げた瞬間だった。
 無抵抗の新谷に弘毅さんが殴りかかり、重い一撃と同時に鈍い音が部屋中に響いて私は悲鳴を上げてっしまった。

「きゃ、きゃああっ!」

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