Sunshine Door
「それでユウトの方はどうなの?順調?」

「うん。まぁまぁかな。」


それとなくユウトの近状を聞き出しながら、また少しずつゆっくりと会話を重ねていく。



そもそもユウトには好きな人がいる。



大学の卒業間近、社会人として別々の環境になることが少しだけ悲しくて、私は苦手なアルコールをグラスの1/2程度飲んだ勢いで、ユウトに問いただしたことがる。



「私がユウトのこと好きって言ったらどう思う?」

「お前の冗談には慣れてるからなんとも思わないよ」



「好きな人いるの?」

「いるよ 片思いだけど」





その瞬間、私の恋は間接的に終わった。


私は声を出して泣き出したいほどの心境だったが、ユウトの前で涙を流したらそれこそ二度と会えないような気がして、残りのグラスに注がれたアルコールを飲み干し、酔った勢いに任せては、涙と彼への一方的な気持ちを持ち帰った。




その日私は暗い部屋の中でたくさんの涙を流し、ユウトへの気持ちも一緒に流すつもりでいた。


しかしどんなにたくさん涙を流してもユウトに対する気持ちだけは何度も拾い直してしまう。



「たった一度だけでも抱いてくれればユウトに対する気持ちを捨てきれるかもしれない。」



そう思った時が過去には何回かあり、不得意なアルコールに任せて無理やりワガママを言ってはユウトの家に泊まったことは何度もある。


しかしどれだけアルコールに満たされ溺れた時でも、いつでも彼は一人、ソファーで眠りに付く。


普段ユウトが使っているベッドを私が一人で独占するのは、少し嬉しくもあり、同時に私を一人の女性として見られていない気がして悲しくもあった。


彼の時間を独占することは、私のエゴであり、彼の恋の時間を邪魔していることにもなる。


「前に進めない」のではなく進むことが出来ない恋をこれ以上続けていても、きっとお互いが不幸になるだけだと思い、今度こそ思いを断ち切る覚悟を決め、今日は彼を呼び出した。




きっとこれが最期の嘘になるだろう。
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