姐御な私と無口なアイツ。
「嘘つけ。熱あるんだろ」


「ないってば」


こんな時だけ口数が多い涼介に若干驚きながら、言い負かされてたまるかときっぱり言う。


「良いから、帰れ。あいつらには俺から言っとくから」


「ちょ、ちょっと待ってっ……」


話を切り上げ、すたすたと視聴覚室に向かって歩いていく涼介を慌てて追いかける。


……が、熱のせいもあって、バランスを崩してしまって……。


「あっ……」


「お、おい……っ」


小さな声が重なり、ぎょっとしたような顔をした涼介が振り向きざまに手を伸ばしてきて、それで……。


──ドンっ


小さな音がしたと思ったら、想像してた衝撃はなくて、そして。


目の前いっぱいに、涼介がいて。


頭のすぐ左にも、右にも涼介の手があって。


──気付いたときには、私は壁際に押し付けられていた。
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