たったひとりの君にだけ
暖かな店内とは裏腹に、当然外気は冷たく肌に突き刺さるほどで。
それでもアルコールで微かに火照った体を正常に戻すにはちょうどいいくらいだ。
ビール2杯じゃ酔わない。
むしろあの場で本気で酔えるほど私は無神経じゃないし、高階君の話が出た頃から明らかに不機嫌だった。
今日一日のハードな業務をも軽く越える、極度の精神的苦痛を強いられた1時間半。
早く帰って湯船で疲れを取ろう。
大好きなヴェレダの入浴剤で癒されよう。
路線を2回変えなければいけない面倒臭さはあるものの、タクシーで帰るほど金銭的余裕はない。
素直に駅へと向かう。
つい先程、福沢諭吉がお一人手元を去った。
仕方のないことだ。