たったひとりの君にだけ

「直輝、久し振り!」


高階君は空いている手を軽く振る。

一方で、私は逃げ出したくても物理的に不可能で、予想以上の力で拘束されていた。
意地でも離さない気満々だ。


「元気だったか?」

「ああ、相変わらず。ってか、充、たまには顔出せよ!」

「だから来たじゃねーかよ!」


リズミカルに繰り返される会話を目の前に、私は静かに溜息をつくと彼の後ろに隠れて最低限の抵抗を試みることにした。

こっそりとメガネ君の様子を伺うと、相変わらずのド派手眼鏡。
道端で遭遇したときと同じ、太めの赤に白ドットだった。

やっぱりダテか度入りか本気で気になるけれど。
今はそんなことどうでもいい。


問題は、初デートは俺がプランしますと言った結果がこれなこと。


オンとオフはキッチリ切り替えたい私が休日に会社近くにいることも近年稀に見るおかしな話だし、そもそもどうして一発目がここなんだろう。

確かに、キオナのコーヒーは大満足の味と香りで、余裕で五本の指に入るレベルだった。

だけど、この調子じゃ今日だって堪能出来るかどうかわからない。
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