Under The Darkness
私はホッと息を吐いた。
京介君は今はまだ学校なんだろう。
でも、あと少しで完全に陽が傾いて暗くなる。そうしたら京介君が戻ってきてしまう。
動ける時間は限られていた。
私は視線を流して必要最低限のものだけ急いで紙袋に詰め込んだ。
カメラマンの金城さんに貰った命より大切なライカのカメラも入れた。
そして、鏡の前でいつも着けている茶色のカラコンを外す。
鏡の中の自分は、淡い緑色の瞳をしている。
これが私の本当の姿。
普段は目立たないようにカラコンをして、元々金髪の地毛も、小学生の頃からずっと焦げ茶色に染めている。
自衛のための、目立たないため、自分が出来る最低限のことだった。
京介君はそれを知らないはず。
馬淵邸でも京介君にはその姿を見せていないから。
今は、京介君に分からないように人種を変える。
直接見たら絶対バレるだろうけど、遠目ではきっと分からないはずだ。
鞄に詰めていた金髪のウィッグを被る。
そうしたら、私はどこからみても外人さんに見えるんだ。
「よし。行くで」
私はタイトなジーンズと白のセーター、その上から愛用の青色のダウンを着込んで、最後にウィッグの上から目深にキャップを被る。
そして、扉を開けて部屋の外の様子を窺った。
お父さんが人払いをしてくれていたので、廊下には誰もいなくて安堵の息を吐く。
そのまま廊下から裏口へと回った。
私は誰にも顔を合わせることなく、呆気ないほど簡単に裏口から外へと出ることが出来たんだ。