Under The Darkness




「ふふっ。でも、美里ちゃんがわたしに惚れちゃうかもよ?」


「ないですね。ジジイが」


「京介にはまだまだ負けないよ?」


「美里さんは?」


 無理やり話をぶった切った京介君は、母屋に視線を移し、お父さんに問う。

 お父さん、京介君に頬を差し出してチョンチョンと指差した。


「さっき、ここにキスしてくれた」


 自慢げなデレ顔で、ふふっとやに下がるお父さんに、私は何を言い出すのかと目が点になる。

 お父さんの言葉を聞いた途端、京介君の纏う空気が濃度を増し、邪悪に澱み出す気がして、全身がぶわっと粟立った。


「――あ゛?」


「ふふっ。『パパァ、おねがぁいっ』だって」


 はあ!? なんだその甘えた口調は。言ってない言ってない! どんな脳内変換してるんだお父さん!?


 私は唖然としながらも、ふたりのやり取りを見守っていたんだけれど。

 思わず訂正に入りたくなるのを必死で堪《こら》えた。

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