Under The Darkness
「大丈夫!? お父さんっ」
余命半年と宣告された父親に暴力を振るうなど信じられない! もはや鬼畜以外の何物でも無い!
私は激しい憤りをそのままに、頽れるお父さんの身体を支えた。
「うん。こっち側にもチューしてくれたら元気になるよ」
今度は反対側のほっぺたを差し出してくる。
私はじっとりと睨んだ。
「……大丈夫そうやね。ほな、私行くわな」
「ああっ、美里ちゃんウソウソごめんなさいッ!」
必死で謝りながら、さっきのは演技だったのかと思うほどにお父さんは元気よく立ち上がり、
「連絡、忘れたら速攻で連れ戻しに行くからね。わかった?」
「う、うん。わかった。後で連絡するね。ありがとう、お父さん」
私は頭を下げた。
協力してくれなかったら、きっと京介君と鉢合わせしてたに違いない。
考えただけで生きた心地がしない。
感謝しても仕切れない。なんとか後数ヶ月逃げ切ります! という決意を込めてお父さんを見つめ返した。
「いいんだよ。京介がいたらイロイロ邪魔されそうだし」
「え? 邪魔?」
「ううん。連絡待ってるね」
意味不明なセリフに首を傾げながら、私はお父さんに手を振った。