この恋、国家機密なんですか!?


そこまで言って私の存在に気づいた高浜さんは、ごほんと咳払いをした。

……なんか、意外な一面を見ちゃった気が……。

いつも紳士な高浜さんも、家に帰ったら普通の男の人なんだ。


「ええと……まあそういうわけでですね、テロリストが現れた瞬間に、篠田は麻耶を避難させてくれたようです」

「小ささを生かして、非常階段のところに隠れてました!」


なんか、誇らしげだけど……。

よく見つからずにすんだものだ。

運が悪かったら、テロリストに捕まって胸元を切り裂かれたのは、麻耶ちゃんだったかもしれない。

私はそっと、自分の傷に手を置いた。

皮膚が薄く切れただけのそこは、もう血も止まっていた。


「まーやー。お前は黙ってろ」


やっぱり怒っているらしい高浜さんに頭をわしっとつかまれて、麻耶ちゃんは涙目で下を向いた。


「それで、現場の状況を俺たち警察に実況すると同時に、篠田から『タイミングを見計らって、消火器で犯人の視界を奪い、人質を脱出させたら防火扉を閉めろ』というメールを受信し、そのようにしたと」


そういえば、私がひどい目にあっているとき、宗一郎さんはなかなか助けてくれなかった。

あれはロープをほどいていただけじゃなくて、麻耶ちゃんにメールをしていたからだったんだ。


< 188 / 214 >

この作品をシェア

pagetop