愛を知る小鳥
引っ越しも進学もやめてしまおうかと思った。
けれど、それをしてしまえば母と過ごした最後の思い出すら否定することになってしまう。親子としての数少ない繋がり。それを自らなくしてしまうことなどとてもできなかった。
母の最後の思いを無駄にしたくない。
美羽は育ってきた小さなアパートを去り、母の思い出と共に新天地へ向かう決意を固めた。
「美羽ちゃんっ!」
「園田さん…どうしてここに?」
引っ越しを翌日に控えた夜、突然園田が尋ねてきた。彼は年明けにバイトをやめていたので、会うのは数ヶ月ぶりだった。もともとバイト先で会うか図書館で勉強を教えてもらう以外に接点はなかったので、何故住所を知っているのか疑問だった。
「今日たまたまバイト先に行ったら話を聞いて…。それで店長にここを教えてもらったんだ」
「…そうですか。わざわざすみません」
当時美羽は携帯を持っていなかった。連絡を取るためにはそうするしかなかったのだろう。
「色々大変だったね…。俺、何も知らなくてごめん…」
「いえ、皆さんにも心配をかけてしまって申し訳ないです」
園田は位牌に手を合わせた後、美羽の入れたお茶を飲みながら荷物の纏められたガランとした部屋を見渡した。
「引っ越すの?」
「はい。色々あって迷ったんですけど、決めた道を進むことにしました」
「そう…。ねぇ美羽ちゃん、前に言ったこと、考え直してもらえないかな?」
その言葉に美羽の表情が曇る。
実は彼がバイトを辞める前、美羽は園田に告白をされていた。だが、美羽は彼を兄として慕っていただけで、そういう対象としては見られなかった。それに、とてもじゃないが恋愛に時間を割く余裕などこれっぽっちもなかった。だから申し訳ないと思いつつ、はっきり断った。その時も何度か食い下がられたが、美羽の気持ちが変わることはなかった。強引になる彼に戸惑いもしたが、そのうちバイトを辞めてそのまま会うこともなくなっていた。
色々と助けてもらったのに申し訳ないと思う一方で、強引な態度に出る園田に困っていた美羽は内心ほっとしていた。
「…ごめんなさい…」
園田の表情が固まるのがはっきりわかった。
けれど、それをしてしまえば母と過ごした最後の思い出すら否定することになってしまう。親子としての数少ない繋がり。それを自らなくしてしまうことなどとてもできなかった。
母の最後の思いを無駄にしたくない。
美羽は育ってきた小さなアパートを去り、母の思い出と共に新天地へ向かう決意を固めた。
「美羽ちゃんっ!」
「園田さん…どうしてここに?」
引っ越しを翌日に控えた夜、突然園田が尋ねてきた。彼は年明けにバイトをやめていたので、会うのは数ヶ月ぶりだった。もともとバイト先で会うか図書館で勉強を教えてもらう以外に接点はなかったので、何故住所を知っているのか疑問だった。
「今日たまたまバイト先に行ったら話を聞いて…。それで店長にここを教えてもらったんだ」
「…そうですか。わざわざすみません」
当時美羽は携帯を持っていなかった。連絡を取るためにはそうするしかなかったのだろう。
「色々大変だったね…。俺、何も知らなくてごめん…」
「いえ、皆さんにも心配をかけてしまって申し訳ないです」
園田は位牌に手を合わせた後、美羽の入れたお茶を飲みながら荷物の纏められたガランとした部屋を見渡した。
「引っ越すの?」
「はい。色々あって迷ったんですけど、決めた道を進むことにしました」
「そう…。ねぇ美羽ちゃん、前に言ったこと、考え直してもらえないかな?」
その言葉に美羽の表情が曇る。
実は彼がバイトを辞める前、美羽は園田に告白をされていた。だが、美羽は彼を兄として慕っていただけで、そういう対象としては見られなかった。それに、とてもじゃないが恋愛に時間を割く余裕などこれっぽっちもなかった。だから申し訳ないと思いつつ、はっきり断った。その時も何度か食い下がられたが、美羽の気持ちが変わることはなかった。強引になる彼に戸惑いもしたが、そのうちバイトを辞めてそのまま会うこともなくなっていた。
色々と助けてもらったのに申し訳ないと思う一方で、強引な態度に出る園田に困っていた美羽は内心ほっとしていた。
「…ごめんなさい…」
園田の表情が固まるのがはっきりわかった。