愛を知る小鳥
「悪いと思うならとりあえず新しい住所教えてよ」

「えっ?」

「今すぐ無理って言うなら待ってやるからさ。俺も4月から就職するし、時間見つけて会いに行くから」

待ってやるってどういうこと…? 私ははっきり断っている。しかも何度も。
そもそも今目の前にいるのは誰なんだろうか?
私が慕ってきた彼はこんな人ではなかったはずだ。
それともこれが本来の姿だったということなのだろうか…?
混乱する頭で必死に考えるが、納得のいく答えなど見つかるはずもない。

「おいっ! 聞いてるのか!」

激しく声を上げられ、体が思い切り跳ねる。その反動で床に置いていたコップが倒れてお茶が零れた。園田は思いっきり舌打ちをすると、濡れたズボンの裾を乱暴に払った。

「ご、ごめんなさい…」

「あーあ、この服高いのにどうしてくれるんだよ」

「ごめんなさい…」

「悪いと思ってるなら俺と付き合ってよ。それでチャラにしてやるから」

高圧的な態度でそう迫る彼の顔はもう美羽の知っているそれとは全くの別人だった。

「まさか無理とは言わないよね? 何のために今まで優しくしてやったと思ってんだよ。人が下手に出てりゃあいい加減調子のってんじゃねーぞ」

普段の優しい顔などどこにもない、まるで悪魔のような顔で吐き捨てる。
もう頭は真っ白だった。

「…なぁ? 優しくしてやるからさ」

「…やっ!!」

パシッ!
ゆらりと伸びてきた手を思いっきり払いのけてしまった。
その瞬間、園田の顔色が明らかに変化したのを美羽は見逃さなかった。

「___てめぇっ! ふざけてんじゃねぇぞ!」

「きゃあっ!」
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