愛を知る小鳥
「…何?」

信じられないといった面持ちでゆっくり振り返った潤に薫は勝ち誇ったように笑う。

「あの香月って子。あの子でしょう? 最近の潤のお気に入りは」

「…何が言いたい」

「あんな子やめといた方がいいわよ。昔から相当男遊びが激しいっていうじゃない」

潤の顔が怒りに満ちあふれていく。だがそんなことに気づきもしない薫はなおも続ける。

「私の古い『知り合い』が昔あの子と付き合ってたらしいんだけど、散々遊ばれて捨てられたって。その時あの子はまだ高校生だったらしいじゃない。信じられない女よ、あの子は」

「何を言ってる…?」

「彼、今でも一途にその子を想ってるみたいだし、私も一肌脱いであげなきゃって。だから____」


ガシャーーーーーンッ!!!


思い切り叩きつけたテーブルからグラスがこぼれ落ちる。周囲にいた人間も何事かとざわつき始めた。
突然激しい怒りを露わにした潤の姿に薫の息が止まる。彼とそれなりの付き合いをしてきたが、いつも冷静沈着な彼が感情を露わにするのはこれが初めてだった。

「潤、どうした…」

「何をした!」

「えっ…?」

「彼女に何をしたっ!!」

背筋が凍るほどの怒りのオーラに薫は震え上がる。

「わ、私は何も…」

潤はゆらりと一歩近づくと、今にも殺してしまいそうなほどの鋭い眼光で薫を射貫いた。その手は怒りでぶるぶると震えている。

「彼女に何かあってみろ。女だからって容赦はしないぞ」

その周囲だけ凍り付いたように空気が止まる。
あまりの恐ろしさに、薫はガタガタと震えることしかできなかった。
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