愛を知る小鳥
それからというもの、美羽は少しでも潤の支えになれるようにと、家のことを中心に献身的に働いた。潤にはそんなに頑張らなくていいと何度も言われたが、何かをしていなければ得体の知れない何かに押しつぶされそうになってしまい、じっとしていることなどできなかった。

「…う、美羽っ!」

突然大きな声で名前を呼ばれて思わず体が弾む。その拍子に手にしていたおかずを落としてしまった。

「あっ、ごめんなさい…!」

慌てて落ちたものを拾い上げる。彼が呼んでいることなど全く気付かなかった。

「…最近よく考え事してるけど、何か悩みごとでもあるのか?」

その言葉にドキッとする。胸がドクドクし始めるが、それをおくびにも出さずに平常心を装って笑顔を見せた。

「そんなことないですよ? ずっとお休みをもらってるからすっかり体がなまってしまって…。そのせいでぼーっとしてしまうんです。こんなんじゃ駄目ですよね」

じっと突き刺さる視線が…痛い。

「…仕事だが、来週から復帰していいぞ」

「ほ、本当ですか?」

潤は驚く美羽の頬に手を伸ばすと、アザのある場所を優しく撫でた。触れた瞬間ピクッと肩が揺れる。

「もうほとんど消えたからな。あと3日もあれば綺麗になるだろう。お前もずっと我慢してたからな…。もういいぞ」

その言葉に美羽の顔がはぁ~っと大きく息を吐きだすと、心の底から嬉しそうに笑った。

「良かったです。皆さんに迷惑をかけていることが申し訳なくて…また来週から頑張ります。潤さん、ありがとうございます!」

「無理はしないこと。いいな?」

「はい! …って、つい最近も似たような会話した気がしますね?」

「フッ、そうかもしれないな」

美羽が心から笑ったのは久しぶりのことだった。
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