愛を知る小鳥
その日美羽はこれまでの穴を埋めるようにがむしゃらに働いた。もともと勤勉だったが、さらに輪をかけてこれまでの遅れを取り戻すように。仕事で迷惑をかけた分は仕事で返すしかないと自分に言い聞かせていた。


「美羽ちゃん、お疲れ様。久しぶりで疲れたでしょう?」

就業時間を過ぎた頃、あかねが声をかけてくると、美羽は慌てて立ち上がった。

「あかねさん、今回は…いえ、今回も本当に色々ありがとうございました。もう何度お礼を言っていいかわからないくらい迷惑のかけっぱなしで…本当にありがとうございます。今こうしていられるのもあかねさんのおかげです」

「やだ、そんなに改まらないでよ! でも本当に大変だったわね…。あなたに何かあったらって生きた心地がしなかったけど、専務も元気になったし、もうこれからは何も気に病むことなく生活できるわね」

そう言って満面の笑みを浮かべるあかねに、美羽は一瞬言葉に詰まる。だがそれを悟られないように笑顔で答えた。

「…はい」





「何も気に病むことなく…か…」

あかねと別れた美羽は、潤と落ち合うまでの時間給湯室の片付けをしていた。
ここ最近、一人になる時間があるとどうしても考え込んでしまう。頭を切り換えなければと思いつつ、今の美羽にはそれが上手くできないでいた。


「皆にちやほやされていい気なものね」


その時、給湯室の入り口から棘のある言葉が投げつけられた。
振り返ると、そこには予想通りの人物、百井が立っていた。
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