愛を知る小鳥
パジャマのボタンを最後までつけ終わると、潤は再び美羽の体自分の中へ引き寄せた。

「潤さ…」

「今日はしない」

「…え?」

「俺が帰ってきたら…その時はお前を俺のものにする」

その言葉に弾かれたように顔を上げると、彼もじっと自分を見つめていた。
その目は真剣だった。

「だから、いい子で待ってろ」

「潤さん…」

「いいか、約束だからな?」

「……はい」

言いながら、美羽の瞳からは涙が溢れてきた。ダメだと思っても、次から次に勝手に流れてしまう。これ以上彼に変に思われることはやめなければと思うのに、体は全く言うことを聞いてくれない。

「どうして泣くんだ」

「……幸せだなって…思ったんです」

その言葉に偽りはない。
彼と過ごした時間は全て幸せそのものだった。
自分の人生で初めて味わうことができた幸せに満たされた時間。
それがもうすぐ終わりを迎えようとしている。

「じゃあこれから先もお前は泣きっぱなしだな」

「…ふふ、そうですね」

そうすることができればどれだけ良かったか。
でもお互いのためにはこうすることが一番なのだ。
美羽は潤に対する罪悪感を振り払うように、大きな背中に手を回してしがみついた。この温かい感触を一生忘れることのないように…

「どうした。今日はやけに甘えん坊だな」

「ダメですか?」

「いいや。そうやって俺にだけずっと甘えてろ」

「…はい」

必死にしがみついてくる美羽を潤も痛い程に抱きしめる。
彼女がどこかに消えてしまわないように、強く、強く。

互いの想いが複雑に交錯する中、最後の夜は更けていった。
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