愛を知る小鳥


「ん…」



ハッと慌てて体を引き起こす。泣き疲れ、いつの間にかテーブルに突っ伏して眠ってしまっていた。窓の外を見れば太陽が少しずつ傾き始めている。

「大変、もうこんな時間…」

泣きすぎてひりひりと痛む顔をパンッと叩いて新しい便箋を取り出すと、今度は気持ちを入れ替えて文字をしたためていった。
彼へ書く最初で最後の手紙。
全ての文字に、ありったけの想いを込めて____


「……よしっ」


全てを書き終えると、それに綺麗に封をしてテーブルの上へと置く。立ち上がり家の中をゆっくり見て回ると、最後にリビングで深々と一礼をした。


「 ありがとうございました 」


震える声でそう呟くと、小さな荷物を手に玄関へと向かう。
そして靴を履くともう一度振り返り、小さな声で囁いた。





「 さよなら… 」





そうして部屋の中から完全に人の姿が消えた。
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