明日、嫁に行きます!
意図しない睨み合いが続く中、お祖母さんがなぜ彼女と知り合ったのかを僕に説明した。
話によると、転びそうになったお祖母さんを彼女が身を挺して庇ってくれたのだという。
その話を聞いて、とても好ましいとさらに興味が増してゆく。
お祖母さんは今まで一切表舞台には出てこなかった。
その存在、彼女の顔を知ってるのは自分を含めた幹部数人のみだ。
鷹城コンツェルンの陰の実力者である事実などルネは知らない。
何の損得感情もなく無償で他人に手を貸すことが出来る女性だという事実は、やはり12年前に出逢った天使なのだと裏付けるもののように僕には感じた。
あの時も、ムシャクシャした気分のまま喧嘩を繰り返しボロボロになった僕に、彼女は何の躊躇いもなく近付いてきて手を差しの述べてくれたのだから。
――――長い年月を経ても心の中の核心部分・本質は、何も変わってはいないのだな。
僕の心は止める術がないほどに彼女へと傾いてゆくのが分かった。
まるで10代の頃のようだと自嘲気味に思う。
「あら、そう言えば、お名前を聞いていなかったわね」
祖母の声にハッとした。
自分は知っている。
彼女の名が、ルネ・シルヴィーであることを。
けれど、彼女は意外な名を口にした。
「斉藤寧音と言います」
寧音? ……誰だ、それは。