明日、嫁に行きます!
逃げる私を追いかける鷹城さんの声に、「ぎゃ――――っ!」と、狭い廊下を早手の如く疾走する。
――――鷹城さんの声、怒ってる怒ってるぅっ!
怖――ッと、駆ける足がもつれそうになった。
「待ちなさいっ!」
倒れ込むようにして自室の扉を開け放った瞬間、がっしりと腕を掴まれてしまった。
そのまま自室へと連れ込まれて、後ろ手にガチャリと鍵をかけられてしまう。
「な、なんで鍵!?」
「とにかく。話を聞かせて頂けますか」
狼狽する私の頭上に降ってくる、鷹城さんの低く静かな声。でも、見上げた彼の顔に浮かぶものは、冷たい怒り。
張り詰めた空気に私は言葉も出なくて。
恐ろしげな威圧をまといながらじっと見据えてくる彼の視線に耐えきれなくなった私は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「きょ、今日、講義が2つも休講で、時間があったから……ちょっと家に戻りたくなっただけなんだけど……」
なんでそんなに怒ってるの? と、ビクビク怯えながら問う。
「どうしていきなり帰ろうなんて思ったんですか。もう、僕の元へは戻らないつもりだったんですか」
――――それは絶対許さない。
すうっと冷ややかに双眸を眇め、厳しい顔つきで追求してくる。
「そんな無責任なことしないし、思ってないよ! ……ただ、なんていうか、ホームシック的な、そんな感じになっちゃって」
恥ずかしかったけど、正直に伝えた。
でも。
「ホームシック? たった数日で?」
鷹城さんが見せた呆れ顔に、いい年をしてたった数日でホームシック? と、その羞恥を私は色に出してしまう。
「だって、仕方ないじゃない! 家族と離れたことなんて、学校行事以外今までなかったんだから!」
思わず声を荒げた私に、鷹城さんの眸が柔らかな笑みを刷いた。
「すいません。誤解していたようです。寧音は寂しかったんですね」
背筋を震わす甘いバリトンの声。あっと声を上げる。
私、気が付いたら、鷹城さんにぎゅうっと抱きしめられていた。
「うわ、あわわ、ちょっと、」
「寂しい時は言って下さい。僕が慰めてあげますから」
――――でも、家には絶対帰さない。
慌てふためく私をキツく抱き込んだまま、鷹城さんは睦言に似た甘い響きで囁いてくる。
耳元に口付ける近さで流し込まれる毒に、私の身体にビリッとした電流が駆け巡った。
ボッと顔に朱を刷いたのが自分でも分かって、恥ずかしさに居たたまれなくなる。さらに強さを増す拘束から逃れようと、私は鷹城さんの腕の中であわあわと藻掻いた。
「ヒィッ、近い近いっ! ななな、んで? なんで帰っちゃダメなの!?」
「……里心がついて、僕の元に戻りたくないと思われるのは困ります」
「そ、んなこと、思わないし……だって、そういう約束でしょ?」
「約束。そうですね。貴女は約束は破らない。でも」
――――寧音がいないと、僕は瞬く間に崩れてしまう。
鷹城さんの唇が肌の上を這うように触れ、私の首筋を震わせた。密やかな声で吐露される彼の心情に、目眩を覚えてしまう。
鷹城さんは、私がいないとダメになるの?
拘束の強さに窒息しそうになりながらも、最後に囁かれた鷹城さんの言葉が甘美な熱を身体に灯《とも》し、陶然と酔う心をふるりと慄わせた。
――――鷹城さんの声、怒ってる怒ってるぅっ!
怖――ッと、駆ける足がもつれそうになった。
「待ちなさいっ!」
倒れ込むようにして自室の扉を開け放った瞬間、がっしりと腕を掴まれてしまった。
そのまま自室へと連れ込まれて、後ろ手にガチャリと鍵をかけられてしまう。
「な、なんで鍵!?」
「とにかく。話を聞かせて頂けますか」
狼狽する私の頭上に降ってくる、鷹城さんの低く静かな声。でも、見上げた彼の顔に浮かぶものは、冷たい怒り。
張り詰めた空気に私は言葉も出なくて。
恐ろしげな威圧をまといながらじっと見据えてくる彼の視線に耐えきれなくなった私は、ぽつりぽつりと話し始めた。
「きょ、今日、講義が2つも休講で、時間があったから……ちょっと家に戻りたくなっただけなんだけど……」
なんでそんなに怒ってるの? と、ビクビク怯えながら問う。
「どうしていきなり帰ろうなんて思ったんですか。もう、僕の元へは戻らないつもりだったんですか」
――――それは絶対許さない。
すうっと冷ややかに双眸を眇め、厳しい顔つきで追求してくる。
「そんな無責任なことしないし、思ってないよ! ……ただ、なんていうか、ホームシック的な、そんな感じになっちゃって」
恥ずかしかったけど、正直に伝えた。
でも。
「ホームシック? たった数日で?」
鷹城さんが見せた呆れ顔に、いい年をしてたった数日でホームシック? と、その羞恥を私は色に出してしまう。
「だって、仕方ないじゃない! 家族と離れたことなんて、学校行事以外今までなかったんだから!」
思わず声を荒げた私に、鷹城さんの眸が柔らかな笑みを刷いた。
「すいません。誤解していたようです。寧音は寂しかったんですね」
背筋を震わす甘いバリトンの声。あっと声を上げる。
私、気が付いたら、鷹城さんにぎゅうっと抱きしめられていた。
「うわ、あわわ、ちょっと、」
「寂しい時は言って下さい。僕が慰めてあげますから」
――――でも、家には絶対帰さない。
慌てふためく私をキツく抱き込んだまま、鷹城さんは睦言に似た甘い響きで囁いてくる。
耳元に口付ける近さで流し込まれる毒に、私の身体にビリッとした電流が駆け巡った。
ボッと顔に朱を刷いたのが自分でも分かって、恥ずかしさに居たたまれなくなる。さらに強さを増す拘束から逃れようと、私は鷹城さんの腕の中であわあわと藻掻いた。
「ヒィッ、近い近いっ! ななな、んで? なんで帰っちゃダメなの!?」
「……里心がついて、僕の元に戻りたくないと思われるのは困ります」
「そ、んなこと、思わないし……だって、そういう約束でしょ?」
「約束。そうですね。貴女は約束は破らない。でも」
――――寧音がいないと、僕は瞬く間に崩れてしまう。
鷹城さんの唇が肌の上を這うように触れ、私の首筋を震わせた。密やかな声で吐露される彼の心情に、目眩を覚えてしまう。
鷹城さんは、私がいないとダメになるの?
拘束の強さに窒息しそうになりながらも、最後に囁かれた鷹城さんの言葉が甘美な熱を身体に灯《とも》し、陶然と酔う心をふるりと慄わせた。