ストーキング☆ロマンス
【3】
時計を確認すると、11時になるところだった。
そろそろコーヒーがなくなる頃だ。
名残惜しさを感じながらも、私はそれを飲み干した。
近くに備え付けてあるゴミ箱にそれを捨てる。

帰ろうと振り返ったときに、奇跡が起こった。

「美味しかった?」
立岡さんがそこに立ってた。
しかも私に話しかけている…!
私は驚きのあまり、その場に硬直してしまっていた。
「いつもここでコーヒー飲んでるね。中で買わないの?」
「どうして…」
私がいつも来ていることに、気付いてたんだ。
そう分かった瞬間、私の全身から熱が出た。
「外を見ると、いつも黒猫ちゃんがいるからさ。気になって」
まさか、貴方をみるために来てます、なんて言えない。
不思議そうな顔をしている立岡さんに、どう答えようかと真っ赤になって考えてたら、大きなくしゃみが出た。
最悪だ。よりによってこんな時に。

「こんな寒い時期にここにいたら、風邪引くよ」
そう言うか言わないかのうちに、彼は私の手を引いて歩き出した。
え?え?どこ行くの?
驚いて繋がれた手を引っ張ると、彼は顔だけ振り返って笑った。
「すぐそこに休憩室があるから、少し暖まろう」
私は反抗するのを止めた。
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